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血清中総ビリルビン濃度で猫の胆管閉塞の可能性を判定した研究

投稿者:武井 昭紘

血清中の総ビリルビン濃度(Total serum bilirubin concentration、TBIL)が上昇している時、肝臓や胆道系の疾患が疑わられる。中でも、胆道閉塞(biliary obstruction、BO)は緊急の手術を要する病気であり、罹患動物を危機的状況に陥らせる事態である。そのため、このBOを予測する指標やマーカーが求められているのだ。つまり、比較的侵襲性の少ない血液検査の項目であるTBILの数値からBOを高精度に予測できれば、診療の効率化を図れるのである。

 

冒頭のような背景の中、イギリスの大学および動物病院らは、過去7年強(2015年1月〜2022年8月)の間に国内の高次診療施設を訪れ、且つ、TBILが上昇していた猫全例の診療記録を解析する研究を行った。なお、同研究では、TBILの上昇は「0.58mg/dLを超える場合」と定義されている。すると、210件以上のデータが集積され、以下に示す事項が明らかになったという。

◆猫のTBILとBO◆
・TBILの中央値は1.73 mg/dLであった
・>0.58〜2.92 mg/dLを軽度、>2.92〜5.85 mg/dLを中程度、>5.85〜11.70を重度、>11.70 mg/dLを非常に重度とした
・約8%(17例)がBOに陥っていた
・年齢が上がるにつれてBOのリスクも増加した
・BOに陥っていたグループのTBILの中央値は9.69 mg/dLであった
・BOではないグループのTBILの中央値は1.51 mg/dLであった
・両グループの数値に有意差があった
・TBILのカットオフ値を3.86 mg/dLにすると感度約94%、特異度約82%でBOを判定できる

 

上記のことから、TBILが3.86 mg/dL以上の症例ではBOを疑えると言える。また、その症例の年齢が高い程に疑わしさが増すことも分かる。よって、条件に合致する猫に遭遇した場合は、BOを鑑別リストに追加することをお薦めする。

本研究の対象となり、且つ、BOと診断された猫全例に緊急の外科手術が適応されております。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38361342/


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