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気管虚脱の犬が呈する発咳の重症度を示唆するバイオマーカーに関する研究

投稿者:武井 昭紘

気管虚脱は犬に良くみられる一般的な呼吸器疾患で、発咳の原因、そしてQOLの低下を起こす一因として知られている。そのため、当該疾患の重症度を判定し、それに応じた治療法を適応することが望ましいのである。しかし、この重症度判定は一次診療施設に広く普及した単純X線検査では難しいとされている。透視検査や内視鏡検査が必要なのだ。そこで思うことがある。これらの大掛かりな検査の他に、簡便な検査はないものだろうか。

 

冒頭のような背景の中、韓国の獣医科大学らは、臨床症状と透視検査で気管虚脱と診断された犬50匹以上を対象にして、咳の重症度を反映する血清中のバイオマーカーを特定する研究を行った。なお、同研究では、臨床症状と透視検査の所見で咳の重症度を3段階(グレード0〜2)に分けており、グループ間で血清中のマトリックスメタロプロテイナーゼ 9(MMP-9)、インターロイキン-6(IL-6)、サーファクタントプロテインA(SP-A)、シンデカン1(SDC-1)のレベルを調べている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆気管虚脱の犬が呈する発咳の重症度を示唆するバイオマーカー◆
・気管分岐部の虚脱状態が酷いと咳の重症度も有意に上昇した
・グレード0に比べて2でMMP-9が有意に高かった
・グレード0に比べて1でIL-6が有意に低かった
・SP-AとSDC-1に差異は認められなかった

 

上記のことから、MMP-9およびIL-6をバイオマーカーとすれば、気管虚脱に伴う咳の重症度を判別できることが窺える。よって、今後、咳の重症度(あるいはバイオマーカーの変動)と必要な治療・治療反応性との関連性について研究され、MMP-9とIL-6の有用性が検証されていくことに期待している。

気管虚脱以外の原因(短頭種気道症候群、ケンネルコフなど)に起因する咳の重症度もMMP-9やIL-6で判定できるかについても研究が進むと、新たな見解が得られるかも知れません。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38341543/


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