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異なる体位で不妊手術を受けたストリートキャットに起きる低酸素血症について調べた研究

投稿者:武井 昭紘

麻酔・手術をする際に注意すべきことの一つ。それは、低酸素状態だ。通常、パルスオキシメーターという麻酔器のシステムから得られるSpO2を指標に判断されることが多いだろう。一方、話は変わるが、猫、特にストリートキャットの不妊・去勢手術では、挿管なしにマスクで、あるいは、マスクなしに大気中の空気で麻酔管理がなされることがある。そう、挿管に比べれば低酸素状態が起きやすいと思われる状況下で手術が実施されるのだ。ならば、何らかの手段でそれを防ぐことはできるだろうか。例えば、姿勢。猫の姿勢(体位)で低酸素のリスクは変動するのだろうか。低酸素になりにくい(なりやすい)姿勢はあるのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、ヨーロッパの大学および動物病院らは、190匹を超えるメスのストリートキャットに不妊手術(TNRプログラム)を施して、彼女らのSpO2を記録する研究を行った。なお、同研究では、左横臥位でベースとなる麻酔中のデータを記録した後、①トレンデレンブルグ法(頭が心臓よりも低い位置になるように傾ける手法)、②横臥位、③仰向けの何れかに猫の姿勢を整えて記録を継続し、術後に再び横臥位(左下)に戻して5分経過した時点のデータまでが纏められている。また、酸素マスク(2L/分)か大気中の空気で呼吸を管理したとのことである。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆不妊手術を受ける猫の体位と低酸素症◆
・全体の33%でSpO2が90%を下回った
・マスクで酸素を供給した猫全例でSpO2の低下が解消された
・酸素を供給しなかった猫の29%で術後の低酸素血症が起きた
・②③に比べて①では低酸素症になる可能性が高かった
・全ての猫が麻酔から回復して24時間以内にリリースされた

 

上記のことから、①では低酸素血症が発生しやすいものの、マスクで酸素を供給すると「それ」は解消されることが窺える。よって、ストリートキャットの不妊手術を行う場合は、何れの体位であったとしても酸素マスクを用意することが望ましいと思われる。

ブトルファノール(0.4 mg/kg)、ケタミン(7 ~ 10 mg/kg)、メデトミジン(0.03~0.05 mg/kg)の筋肉内注射で麻酔をかけたとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38174763/


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