角膜を保護する涙が少なくる犬の乾性角結膜炎(keratoconjunctivitis sicca、KCS)は、涙の成分を補う、あるいは、免疫機能を抑える点眼薬を使って治療することが一般的である。しかし、この点眼は毎日のことである。忙しくとも、自分自身のことでイッパイ一杯であっても、点眼が苦手でも毎日のことなのだ。そこで、疑問が浮かぶ。毎日の点眼から解放される術はないのだろうか。
冒頭のような背景の中、北米の大学および動物病院らは、KCSを疑う症状のある犬を対象にして、①シロリムスのリポソーム製剤を隔週で結膜下に注射して、その効果を検証する研究を行った。なお、同研究では、比較対照として②シクロスポリンや③タクロリムスを毎日点眼するグループも用意されている。また、シルマーティアテスト、結膜充血、角膜混濁の程度をスコア化した値と、副作用の有無が評価されている(2週間ごと、14週間)。すると、30個の眼のデータが集積され、いずれのスコアにも統計学的な有意差は認められず、全症例で重大な副作用は起きないことが判明したという。
上記のことから、①は②③と同等の安全性・有効性を誇ることが窺える。よって、今後、大規模な臨床試験が進むとともに、シロリムスの用法・用量(特に結膜下注射を一次診療施設でも実践できるようにする)に関するガイドラインが作成され、犬のKCSの管理が簡略化されることを期待している。

シロリムスの用量は1 mg/mL(100μg相当)だとのことです。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38329299/