不妊・去勢手術に臨んで、晴れて退院。この時、抜糸などの術後の再診、肥満を防ぐ体重管理を含めて、獣医師はオーナーに注意点を伝える。口頭では勿論のこと、丁寧な説明を心掛ける、あるいは、マニュアル化された動物病院では定型の文章を記した書面を使用するかも知れない。そこで、皆様に伺いたい。トラブルを回避するために堅苦しくなって、その文章は難解になっていないだろうか。獣医師や動物看護師には理解できるとしても、オーナーの視点からでは理解が難しい表現になっていないだろうか。そして、それが元で、かえつてトラブルが起きていないだろうか。
冒頭のような背景の中、アメリカの獣医科大学は、不妊・去勢手術を受けた犬猫150匹弱のオーナーに提示された、退院時の注意点を明記した文章(書面)に着目して、その文章の難易度と術後合併症(診療記録を遡って確認)の関連性を調べる研究を行った。なお、同研究では、スコア化した難易度で文章を「かなり難しい」から「かなり簡単」まで分類している。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆文章の難易度と合併症◆
・約31%が「かなり難しい」または「難しい」文章であった
・約60%が「標準的」な文章であった
・約9%のみが「かなり簡単」な文章であった
・全体として文章の難易度と合併症の発生に関連性があった
・犬と猫に分けると犬のみで関連性があった
上記のことから、特に犬の不妊・去勢手術において文章の難易度と合併症が関連していることが分かる。よって、今後、生成AIも活用しながら合併症の発生を抑える文章表現について体系化され、退院後のトラブルが少ない不妊・去勢手術が実現することを期待している。

人医学では患者向けの書面の難易度は小学校6年生でも理解できるように表現することが推奨されております。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38321362/