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膵炎の診断に活用される猫の膵特異的リパーゼの精度を算出した研究

投稿者:武井 昭紘

バイオマーカーを用いた血液検査(診断)では注意することがある。完全・完璧な精度を誇る検査は無いということだ。また、検査は所詮検査である。一つの検査の結果をもって、疾患の確定診断はできないのだ。膵特異的リパーゼは、その代表格である。この数値が高いからといって、即膵炎とは診断できない。本稿では、それを実感して頂きたい。世界的な動物検査会社IDEXXが提供している猫の膵特異的リパーゼ(Spec fPL)に関する研究だ。詳細は以下の通りである。

 

◆猫の膵特異的リパーゼの精度◆
・臨床健康な猫41匹、膵炎を疑う症状のある猫141匹が研究に参加した
・過去にSpec fPLが測定された786件のデータも利用した
・Spec fPLの参照値を0.7~3.5 μg/Lとした
・カットオフ値を5.4 μg/Lとした
・Spec fPL以外の臨床検査所見に基づいて2名の内科専門医に膵炎の可能性を判定してもらった
・その可能性は「確実に膵炎」から「絶対に膵炎ではない」まで6段階で表現した
・「確実に膵炎」または「おそらく膵炎」を判定するSpec fPLの感度は約79%であった
・「おそらく膵炎ではない」または「絶対に膵炎ではない」を判定するSpec fPLの特異度は約80%であった
・陽性的中率は69%であった
・陰性的中率は87%であった

 

上記のことから、Spec fPLは猫の膵炎を診断する指標の一つであると言える。しかし、その精度は完璧ではないことも分かる。よって、当該疾患の診断は、猫の臨床症状、各種臨床検査所見を基にした総合判断で進めていくことが望ましい。

内科専門医は、病歴、身体検査、血液検査、尿検査、腹部超音波検査、転帰に関するデータから膵炎の可能性を判定したとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38100989/


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