心臓と腎臓は血管で繋がっている。そのため、両者は影響し合い、何らかの病気が一方にあると他方にその不調が波及すると考えられているのだ。そして近年これを裏付けるように、獣医学の分野にて急性腎障害は心血管系のトラブルの引き金になるという報告がなされているのである。では実際のところ、臨床現場ではこの説を証明できることは起きているのだろうか。心臓と腎臓は密接な関係にあるのだろうか。
冒頭のような背景の中、フランスの大学は、急性の尿路閉塞を呈した猫の診療記録を解析し、心血管系のトラブルに関する情報を纏める研究を行った。なお、同研究では、①尿管・②尿道のいずれかが閉塞した症例を対象としている。また、心血管系のトラブルには、不整脈、ギャロップ、心雑音、体液の過剰による心負荷、組織灌流の減少が含まれている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆急性の尿路閉塞に対する治療を受けた猫における心血管系のトラブル◆
・168例のデータが集積された
・①が56例、②が112例であった
・症例の約62%に心血管系のトラブルが起きた
・最も一般的なトラブルは不整脈であった(約34%)
・次いでギャロップ(約28%)、心雑音(約15%)、体液の過剰による心負荷(約14%)、組織灌流の減少(約9%)が続いた
・血液中カリウム濃度、慢性腎臓病の有無、腎盂の拡張(超音波検査)がトラブルの発生と関連していた
上記のことから、尿路閉塞の治療を受けた猫には心血管系のトラブルが多く見られることが窺える。よって、トラブルの発生と関連する前述の3つ条件に該当する症例では、泌尿器は勿論のこと、循環器のモニタリングをすることをお薦めする。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38164379/