①キアリ様奇形と②脊髄空洞症は、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルを筆頭に小型犬が多く発症する神経系疾患である。しかし、同じく小型犬で高い人気を誇るポメラニアンにおける①②の発生状況に触れた論文は乏しいのが現状である。果たして、彼らにも、これらの疾患は良く見られるのだろうか。
冒頭のような背景の中、ヨーロッパの大学および動物病院らは、過去9年間(2015年2月〜2023年6月)に渡ってポメラニアンの診療記録を解析する研究を行った。なお、同研究では、22ヶ国に跨る複数の診療施設から790匹以上のデータが集積されている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆ポメラニアンの①と②◆
・①の有病率は約55%であった
・②の有病率は約24%であった
・オーナーから申告のあった主な臨床症状は下記の通りである
1.頭や耳の皮膚を実際に掻く(約58%)
2.空中を舐める(約31%)
3.痛みを訴える様子(26%)
4.四肢を舐める(約23%)
5.ファントムスクラッチ(約23%)
・ファントムスクラッチ、吠える行動、頭を振る行動、痛みを訴える様子、空中を舐める行動は②に関連していた
・脊髄に形成された空洞のサイズと臨床症状に関連性はなかった
・犬の出身国、血統、年齢と①②の間に有意な関連性はなかった
上記のことから、ポメラニアンの①や②は珍しい病気ではなく、一般的な病気だと言える。また、ファントムスクラッチの他に特徴的な症状があることも分かる。よって、該当する症状を呈する同品種の診察では、①②を疑うことが望ましい。
参考ページ:
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.1320942