ニュース

リンパ節過形成とリンパ腫の犬から得られた病理組織切片を人工知能で解析した研究

投稿者:武井 昭紘

リンパ腫は、犬で良く見られる腫瘍性疾患で、細胞診あるいは病理組織検査においてリンパ節過形成と区別しなければならない病気である。また、当該疾患は細かく分類されており、その区別も重要とされている。しかし、細胞診や病理組織検査には主観が混ざることがあり、客観性に乏しくオーナーや新人獣医師には理解しえない所見が含まれてしまうのだ。一方、話は変わるが、人工知能は数値化されたデータを実に客観的に判断するため、医学・獣医学の検査や診断に活用され始めている。そこで、疑問が浮かぶ。この人工知能は、リンパ節過形成とリンパ腫を見分けることができるのだろうか。

冒頭のような背景の中、リバプール大学は、犬の正常なリンパ節(リンパ節過形成)、3タイプのリンパ腫から作製した病理組織切片の顕微鏡画像を、人工知能を使って識別する研究を行った。なお、同研究では、WHOが提唱するリンパ腫のサブタイプ、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B cell lymphoma、DLBCL)、リンパ芽球性リンパ腫(lymphoblastic、LBL)、辺縁帯リンパ腫(marginal zone lymphoma、MZL)が対象となっている。すると、総計1530枚の切片から構成された457のテストのうち、456を正確に識別できることが判明したという。そして、この結果から算出された精度は99.34%に達することが分かったとのことである。

上記のことから、人工知能はリンパ節過形成とリンパ腫を見分けることができると言える。よって、今後、リンパ腫の可能性を数値で示す人工知能を用いた病理検査が商業化され、腫瘍科診療の効率化、客観化が進むことを期待している。

リンパ節過形成は4検体、DLBCLとLBLは5検体、MZLは3検体で構成されていたとのことです。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.1309877/full


コメントする