正に発作が起きている瞬間が一番衝撃的だとは思うが、発作の前後においても特発性てんかんに関連する兆候・症状が出現することがある。では実際のところ、前後に起きる何らかのイベントは、ペットひいてはオーナーの生活の質に影響を及ぼすのだろうか。それを明らかにし、対策を講じることは動物福祉の向上に寄与するものと考えられる。
冒頭のような背景の中、ドイツの大学は、発作を起こす犬のオーナー400名以上にアンケートを依頼して、その影響を調べる研究を行った。すると、290件を超える有効な回答が集まり、以下に示す事項が明らかになったという。
◆特発性てんかんを抱える犬の発作後期の症状と生活の質◆
・97%のオーナーが発作後期に兆候や症状が現れると回答した
・60%以上のオーナーがその程度を中程度〜重度と報告した
・最も一般的なものが見当識障害であった
・次いで歩行異常、失明、運動失調が続いた
・70%以上のオーナーが緊急で使用する抗てんかん薬に効果は無いと回答した
・同じく70%以上が安静にすること、愛犬に近付くこと、静かで暗い環境に移ることなどが有効だと回答した
上記のことから、発作後期の兆候・症状は非常に多くの犬およびオーナーが経験していることが窺える。また、抗てんかん薬、つまり薬物療法は事態の収拾に役立っていないことも分かる。しかし一方で、薬物療法以外の対処法(安静にすること、愛犬に近付くこと、静かで暗い環境に移ること)は有効なようである。よって、今後、発作、そして発作後期の兆候・症状を改善する「真の治療法・対処法」について議論され、いつ起きるか予測の付かない発作に苦しむ犬とオーナーが減っていくことを期待している。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38200833/