輸血療法を実施する上で注意することの一つに感染症がある。ドナーから貰った貴重な血液製剤に何らかの病原体が含まれていたら、輸血を必要とする、つまり体調や免疫状態の芳しくないレシピエントに感染リスクが発生してしまうのだ。では実際のところ、どのようか感染症に気を付けるべきなのだろうか。各国・各地域の感染症に関する疫学を基に、対策を講じる必要がある。
冒頭のような背景の中、ヨーロッパの動物用血液バンクは、ポルトガルとスペインで暮らすドナーから得られた血液製剤を対象にして、病原体を検出する血清学的検査およびリアルタイムPCRを実施する研究を行った。なお、同研究では、リーシュマニア、エールリヒア、ブルセラ、バベシア、アナプラズマ、犬糸状虫の検出が試みられている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆輸血ドナー候補の犬の血液に潜む病原体◆
・8000匹以上のドナーから血液を採取した(35000件分以上の血液製剤)
・約4%が何らかの病原体についてPCR陽性となった
・最も一般的な病原体はアナプラズマであった
・14%が何らかの病原体について血清学的検査陽性となった
・最も一般的な病原体はリーシュマニアであった
・陽性数の約28%は過去のドネーション(本研究の検査の3~12ヶ月前)で病原体は検出されていなかった
・陽性数の18%は近々で病原体に感染していた
上記のことから、ドナー候補の一定割合に感染が起きていることが窺える。また、過去のドネーション時点での陰性結果は、時間が経過するつれ信憑性が失われることが窺える。よって、病原体に関する検査は、ドネーションの直前に実施することが望ましいと思われる。

同研究では、リアルタイムPCRでリーシュマニア、エールリヒア、ブルセラ、バベシア、アナプラズマ、血清学的検査でリーシュマニア、エールリヒア、犬糸状虫の検出を試みています。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38185815/