世界的に犬猫の体重・体型は、9段階のbody condition score(BCS)で評価される。その中で、最も深刻な肥満と判定されるものがBCS9であり、理想体重から40%も重いことが指標になっている。しかし残念ながら、実際の臨床現場では、40%を超えて非常に重い体重を示す犬猫が存在しているのが現状である。言わば、BCS10と表現することもできるような、想定を外れた超肥満という状況がそこにあるのだ。そこで、疑問が浮かぶ。もしも仮に、超肥満(BCS10)の犬猫のオーナーに減量プログラムを提示した場合、BCS9の犬猫のプログラムと異なる事態は発生するのだろうか(発生するならば対策を考えなければならない)。
冒頭のような背景の中、リバプール大学およびロイヤルカナン社は、肥満と診断された犬猫500匹以上を対象にして、彼らの減量プログラムを追跡する研究を行った。なお、研究に参加する犬猫は、クラスI(理想体重から40%以内の増加に収まる肥満)とクラスII(理想体重から40%以上の増加となった肥満)の2つのグループに分けられている。なお、同研究では、二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)を用いて体組織の変化を観察している。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆理想体重から40%以上の増加となった肥満の犬猫の減量プログラム◆
・犬398匹、猫116匹が参加した
・犬の40%がクラスI、60%がクラスIIに分類された
・猫の59%がクラスI、41%がクラスIIに分類された
・クラスIに比べてクラスIIの犬は減量プログラムを完了する可能性が有意に低かった
・体重の減少速度も有意に遅かった
・加えて除脂肪組織の損失が有意に大きかった
・クラスIに比べてクラスIIの猫の体重減少の期間は有意に長かった
・犬と同様に除脂肪組織の損失が有意に大きかった
上記のことから、クラスII、つまり超肥満の犬猫の減量プログラムでは除脂肪組織の損失が大きいことが窺える。また、プログラムを遂行できない可能性、体重の減量が遅くなる可能性があることも分かる。よって、今後、効率良く体重を落とし、且つ、除脂肪組織の損失が最少限となる減量プログラムが考案され、「重度の病気」である超肥満の犬猫に対する安全・安心な「治療法」が確立されることを期待している。

研究に参加した犬猫は、肥満の治療を専門的に行う動物病院に訪れた症例だとのことです。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38151525/