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犬の尺骨に発生した腫瘍に対する外科手術と放射線療法の効果を比較した研究

投稿者:武井 昭紘

特定の部位に腫瘍が発生した場合、外科手術をするか、それとも他の治療法を選択するか、多くの獣医師、オーナーが悩むだろう。果たして、どちらが効果的なのか。罹患動物から苦しみが取り除けるのか。非常に大きな問題である。そこで、ある研究を紹介したい。それは、犬の尺骨に発生した腫瘍に対する外科手術と放射線療法の効果を比較した研究だ。なお、研究を発表したコロラド州立大学によると、詳細は以下の通りである。

 

◆犬の尺骨に発生した腫瘍に対する外科手術と放射線療法の効果◆
・16例が尺骨の部分切除を目的とする外科手術を受けた(①)
・12例が②定位放射線治療(小領域に多方向から集中的にの放射線を照射すること)を受けた
・12例が③緩和的放射線療法(痛みの緩和やQOLの改善を目的として放射線を照射すること)を受けた
・①の経過は良好で手根関節の安定化のための外科手術を追加で受ける症例はいなかった
・②の約33%、③の約42%で病的骨折が起きた
・①の約13%、②の約42%、③の約17%が再発した
・①の約19%、②と③の50%に合併症が生じた
・生存期間の中央値は198日だった
・生存期間にプラスの効果を齎すファクターは補助的な化学療法だった

 

上記ことから、病的骨折、再発、合併症の観点を考慮すると、①を第一に検討することが望ましいと思われる。また、生存期間を延長する化学療法を併用することも良いと考えられる。一方で、放射線療法においては、病的骨折、再発、合併症のリスクを軽減する方法を模索する必要があるようだ。よって、今後、放射線療法のデメリットを改善するための研究が進み、①~③の優劣が是正され、治療に関する選択肢の幅が広がることを願っている。

①の症例には茎状突起を切除した犬も含まれているそうです。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.1172139/full


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