4歳齢の雑種の犬が、昨日から始まった倦怠感、後肢の脱力、尿閉を主訴にヨーロッパの動物病院を訪れた。検査の結果、全身のリンパ節が腫大し、T3-L3に相当する脊髄にトラブルがあることが判明した。診断名は多中心型リンパ腫。ステージはVb。厳しい状況の中、直ちに化学療法が開始される。すると、幸いにも臨床的な寛解を達成することができた。しかし、その後、急激に事態が悪化してしまった。固有位置感覚は消失し、罹患犬が脊髄に痛みを訴えのだ。MRI検査と脳脊髄液の分析から、リンパ腫が髄膜や脊髄に浸潤していることが判明した。
浸潤している場所を考慮して、化学療法剤をクモ膜下腔内に投与することが決まった。大曹からシトシン アラビノシドおよびメトトレキサートを注入する。24時間以内に臨床症状は改善した。以降3.5週間、症状は再び現れることはなかった。だが、安定したのも束の間、中枢神経症状が再発。更なるクモ膜下腔内への化学療法剤の投与を提案するも、それをオーナーは拒否した。リンパ腫と診断されてから9週間後、人道的な理由から安楽死となった。
症例を報告したヨーロッパの大学および動物病院らは述べる。『犬の中枢神経系に発生したリンパ腫に同薬剤を適応し、クモ膜下腔内に投与した例は初めてだ』と。また、『クモ膜下腔内に化学療法剤を投与する手法で短期的な臨床的寛解を得られる』と主張する。よって、読者の皆様が同様の病態を抱える犬に遭遇した場合は、本研究で採用された手法を実践してみることをお薦めする。

今後、長期的な寛解を得る方法についても議論されることを期待します。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37732143/