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副腎腫瘍に対する開腹手術または腹腔鏡下手術を受けた犬の経過を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

腹腔鏡下手術は侵襲度が低く、近年において小動物臨床で実施されるようになってきた手法である。しかし、犬の不妊手術をテーマにしたある研究では、通常の①開腹手術よりも②腹腔鏡下手術の方が術後の炎症が強いと報告されている。果たして、①と②では、どちらが動物のストレスや痛みを軽減する手法なのだろうか。多種多様な疾患、様々な術式を対象にして、一つひとつ検証していく必要があるものと思われる。

 

冒頭のような背景の中、ヨーロッパの大学および動物病院らは、過去14年間にて①または②で副腎摘出術を受けた犬70匹の経過を解析する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆副腎腫瘍に対する開腹手術または腹腔鏡下手術を受けた犬の経過◆
・28匹が①に臨んだ(③副腎皮質機能亢進症22匹、④褐色細胞腫3匹、⑤副腎とは関係の無い診療で偶然発見された副腎の腫瘍3匹)
・42匹が②に臨んだ(③27匹、④4匹、⑤10匹、③と④の併発1匹)
・8匹は両側の副腎を摘出した
・①と②に要する手術時間に差は無かった
・術中の高血圧症が①の1匹、②の7匹に起きた(有意差なし)
・術中の低血圧症が①の4匹、②の2匹に起きた(有意差なし)
・①の27匹、②の40匹が無事に退院した(有意差なし)
・平均入院期間は①よりも②で有意に短かった
・再発、無病期間、生存期間に有意差は認められなかった
・腫瘍のサイズは再発と深く関与していた
・また無病期間と生存期間にも影響を与えた

 

上記のことから、入院期間の短縮を考慮すると、①よりも②が優れていると考えられる。よって、①と②何れも選択できる状況であるならば、②を選択することをお薦めする。

①の1年、2年、3年生存率は92、88、81%で、②では95、89、89%だったとのことです。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.1156801/full


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