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新型コロナウイルスのパンデミック前後における猫の特発性膀胱炎の発生状況

投稿者:武井 昭紘

猫の特発性膀胱炎はストレスが発症要因になっていると言われており、その治療は飼育環境の整備が主体となっている。一方、話は変わるが、新型コロナウイルスによるパンデミックは、移動や経済活動の制限を引き起こし、多くのヒトにストレスを与えたとされている。また、その制限によってペットを取り巻く環境も変わり、彼らも少なからずストレスを受けたと考えられているのだ。つまり、パンデミックを契機にして、特発性膀胱炎を起こす猫が増えても不思議ではない状況になっていると推測できるのである。

 

冒頭のような背景の中、オーストラリアの動物病院らは、パンデミック前後(2019年2月8日〜2021年2月8日)に救急外来を訪れた猫の診療記録を集積し、特発性膀胱炎、または、それに伴う尿路閉塞を起こした猫のデータを解析する研究を行った。なお、同研究では、尿路感染症が確認された症例と対象期間より前に特発性膀胱炎・尿路閉塞を発症している個体は除外されている。また、2020年2月を境にしてパンデミック前と後が分けられている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆パンデミック以前と以後における猫の①②の発生状況◆
・パンデミック前の特発性膀胱炎の発生率は4.3%であった(①)
・①のうち1.4%は尿路閉塞を認めなかった
・①のうち2.9%は尿路閉塞を認めた
・パンデミック後の発生率は5.4%であった(②)
・②のうち2%は尿路閉塞を認めなかった
・②のうち3.4%は尿路閉塞を認めた
・パンデミック前後で発症リスクに差異は無かった

 

上記のことから、パンデミックと猫の特発性膀胱炎の発症に関連性は無いことが窺える。一方、本研究とは異なって、「発症リスクが上昇する」と報告した論文もある。よって、今後、真偽を突き詰める(最終的な見解を統一する)ための研究が計画され、猫の特発性膀胱炎に対する理解が深まることを期待している。

以前の研究と同様に、特発性膀胱炎は去勢オスが大部分を占めていたとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38095946/


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