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犬の細菌性髄膜炎・髄膜脳炎に関する疫学を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

人医療において、細菌感染に伴って起きる髄膜炎・髄膜脳炎(Bacterial meningitis・meningoencephalitis、BM・BMEM)の致死率は高く、生存したとしても後遺症に悩まされるケースが珍しくないという。しかし一方で、BM・BMEMを発症した犬の転帰に関するデータは乏しく、不明な点があるのが現状となっている。

 

冒頭のような背景の中、イギリスの大学および動物病院らは、過去10年間(2010年1月〜2020年8月)BM・BMEMを発症した犬24匹を対象にして、彼らの診療記録を解析する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆犬のBM・BMEMに関する疫学◆
・臨床症状が認められた期間は中央値で2日(24時間以内〜30日)であった
・下記の症状が18匹の犬で記録されていた
脳神経障害:13匹
精神異常:12匹
知覚過敏(頚部):10匹
運動失調、歩行困難、斜頸:各8匹
発熱:3匹

・15匹の脳脊髄液の細胞診で細菌が確認された
・脳脊髄液の培養をした21匹のうち8匹で細菌が検出された
・15匹が中耳炎や内耳炎と診断されていた
・そのうち6匹が外科手術を受けていた
・抗生剤の投与期間は中央値で8週間(2〜16週間)であった
・15匹にステロイド剤が投与されていた
・20匹が生存して無事退院した
・9匹に後遺症が残った
・1匹が再発した

 

上記のことから、BM・BMEMを発症した犬の予後は比較的良好だと言える。また、当該疾患は耳の疾患と深く関与していることが窺える。よって、今後、中耳炎・内耳炎の重症度や治療歴とBM・BMEMの予後について研究が進み、当該疾患の治療法が見直され、予防法が確立し、生存率や後遺症リスクが改善されることを期待している。

BM・BMEMに対する抗生剤療法は長期になる傾向があるようなので、その適正使用について議論され、乱用を防止する策が考案されることも期待します。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36639963/


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