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副腎に生じた腫瘤の破裂に対する外科手術を受けた犬猫の転帰に関する研究

投稿者:武井 昭紘

腫瘍の一部は破裂して、急性の出血を生じる。そして、動物を死へと誘う。そのため、腫瘍に付き纏う出血リスクを理解し、如何にして緊急事態を避けるか、あるいは、死亡率を低く保つかについて研究し、議論を深めることが重要なのだ。

 

冒頭のような背景の中、北米の大学らは、過去22年間において副腎に生じた腫瘤の破裂し、且つ、副腎摘出術を受けた犬猫60匹以上の診療記録を解析する研究を行った。なお、同研究で解析されたデータは臨床症状、術前の診断、麻酔・手術の内容、入院時の経過、組織病理学検査所見、補助治療に関するもの、転帰 (再発、転移、生存) であった。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆副腎に生じた腫瘤の破裂に対する外科手術を受けた犬猫の転帰◆
・入院から手術に至るまでの期間は中央値で3日であった
・症例の34%が来院から1日以内に(緊急で)手術を受けていた
・手術が緊急であることと術中に出血が確認されることは術中の輸血療法と関連していた
・短期(14日以内)に合併症が起きる確率は42%であった
・短期の死亡率は21%であった
・短期的な生存を妨げる要因は下記の通りであった
手術が緊急であること
手術中に低血圧を呈すること
複数回に渡り手術をすること

・生存期間は中央値で574日であった
・短期で死亡した症例を除くと中央値は900日になった
・組織病理検査所見と生存の可能性には関連はなかった

 

上記のことから、副腎に生じた腫瘤の破裂に対して外科手術を受けた犬猫の予後は、特定の状況を除いて比較的良好であることが窺える。よって、今後、緊急の手術を避け、術中の低血圧を防ぎ、一度きりの手術で済ませる方法について議論され、生存率が向上することを期待している。

短期的に死亡する症例を詳細に解析すると、生存期間を延ばす方法が見つかるかも知れません。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37734721/


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