化学療法。それは、小動物臨床の腫瘍科診療で選択される一般的な治療法の一つだ。しかし、この治療法には、腫瘍組織を縮小させるという大きなメリットの裏に、重大な副作用というデメリットが付き纏っているのてある。また、そのデメリットは腫瘍で苦しむ動物に更なる苦痛を齎すリスクとなることもあるのだ。そして時に、この副作用はオーナー(あるいは担当する獣医師)が許容できないレベルへと発展することもあるのだ。
冒頭のような背景の中、アメリカのパデュー大学は、①ペットを飼育するオーナー150名以上と②腫瘍科専門医(獣医師)110名以上を対象にして、治療の目的が寛解、延命、生活の質の改善といった3つのシナリオであった場合の彼らの化学療法に伴う副作用に対する許容度を聴き取る研究を行った。すると、寛解や延命が目的であった場合は②に比べて①が、生活の質の改善が目的であった場合は①に比べて②が有意により重い副作用を許容することが判明したという。
読者の皆様は今、化学療法を検討する必要があるペットと向き合っているだろうか。もしも、向き合っているならば、オーナーと獣医師の許容度には相違点があることを意識して、治療方針に関する話し合いを進めて頂けると幸いである。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38041950/