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ホルネル症候群らしき症状を呈した猫に起きた声変わりの原因

投稿者:武井 昭紘

アメリカン・ショートヘア(7歳齢、去勢オス)が、ホルネル症候群(左側)を主訴に韓国の動物病院を訪れた。主な症状は、嚥下障害、発咳、瞳孔の大小不同、第三眼瞼の突出(左側)。また、気になる点としては、鳴き声が変わったということであった。精査の結果、内視鏡検査で喉頭麻痺、CT検査で左側の鼓室胞骨付近に融解を伴う腫瘤性病変が認められた。果たして、一連の症状・所見はこの腫瘤が原因なのか。腫瘤の切除と病理検査が行われた。

その腫瘤は、中耳に発生した腺癌だった。症状から推測された神経学的な問題は、脳神経である舌咽神経(IX)、迷走神経(X)、副神経(XI)、舌下神経(XII)の障害。総合すると、腺癌がこれらの神経の機能を妨げていたと考えられた。

1916年、外傷、腫瘤、動脈瘤など原因は様々で中耳の腺癌に限らないのだが、IX〜XIIの脳神経や交感神経が障害されて臨床症状が発現する病的現象が、ヒトの医学で報告された。その名もヴィラレー症候群。今回紹介した論文を発表した韓国の大学および動物病院らは、本症例は猫としては世界初のヴィラレー症候群だったのではないかと述べる。また、猫には稀な中耳の腺癌が起因となつていることも珍しいと訴える。猫のホルネル症候群の約半数(45%)が特発性とされる現代の小動物臨床の中で、ヴィラレー症候群はどれくらいの割合を占めるのか。今後、有病率を算出する研究が進むことに期待している。

本症例はフェニレフリンの点眼で20分以内に散瞳したため、節後性神経障害が疑われました。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.1225567/full


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