スケーリング、ルートプレーニング、抜歯など麻酔下で行われる歯科処置を受ける犬では、一過性の菌血症が起きるとされている。そのため、この菌血症を解決するべく、抗生剤療法が適応されるのだ。そこで、疑問が浮かぶ。耐性菌が世界的な社会問題になっている現代において、抗生剤の乱用は避けるべきである。果たして、歯科処置に伴う菌血症には抗生剤療法が必要なのだろうか。抗生剤を使用しないことで、何らかのデメリットが発生するのだろうか。
冒頭のような背景の中、アメリカはテキサス州の動物病院らは、慢性歯周病によって1本以上の歯を抜く必要がある、且つ、それ以外に健康問題を抱えていない犬13匹を対象にして、彼らの血液サンプルの細菌培養をする研究を行った。なお、同研究に参加する個体には、歯科処置前の2週間、歯科処置中、歯科処置後の何も抗生剤療法を受けていないことという条件が課せられている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆歯科処置を受けた犬の菌血症◆
・様々な時間帯で菌血症は起きていた
・どの時間帯でも培養が陽性になるのは最大4匹までであった
・最終時点での血液培養は全例で陰性だった
上記のことから、歯科処置によって菌血症は起きるが、それは一過性であり、抗生剤療法を適応しなくとも解消されることが分かる。つまり、歯科処置を受ける犬に抗生剤を投与する必要はないと言えるのだ。耐性菌が猛威を振う現代。読者の皆様は、犬の歯科処置に抗生剤は必要だと考えるだろうか。今回紹介した研究を基に、その必要性を再考して頂けると幸いである。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37997386/