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子宮蓄膿症に対する外科手術を受けた犬の腹部超音波所見に関する研究

投稿者:武井 昭紘

子宮蓄膿症は、無治療では致死的経過を辿る生殖器疾患で、原則、卵巣子宮全摘出術(ovariohysterectomy、OHE)によって治療される。そこで、疑問が浮かぶ。術後の経過が良好である場合、開腹してメスや鋏で切って糸で縫い結紮した腹部では、どのような変化が起きているのだろうか。そして、その変化は、超音波検査にて観察できるのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、ヨーロッパの大学および動物病院らは、子宮蓄膿症に対する治療としてOHEに臨んだ、且つ、経過が良好であった犬22匹を対象にして、腹部超音波検査を実施する研究を行った。なお、同研究では、①術後1日目、②4〜6日目、③10〜15日目の3地点で検査が実施されており、子宮頸部の断端、卵巣提索(結紮部位)、内側腸骨リンパ節(medial iliac lymph node、MILN)、腹水や気腹の存在が観察されている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆子宮蓄膿症に対するOHEを受けた犬の腹部超音波所見◆
・全ての犬で子宮頸部の断端は中心部が低エコー源性で周囲が高エコー源性の組織として観察できた
・子宮頸部の断端の横断面は①③よりも②で有意に大きかった
・全ての犬で卵巣提索(結紮部位)はシャドーを伴う不均一な高エコー源性を示した
・MILNには特段の変化を認めなかった
・腹水は①の時点で症例の45%、②で41%、③で9%に認められた
・気腹は①の時点で症例の95%、②で82%、③で14%に認められた

 

上記のことから、子宮蓄膿症に対するOHEを受けた犬の腹部超音波検査所見には特徴があることが窺える(MILN以外)。よって、術後モニタリングまたは何らかの異常の有無をチェックする場合において、これらの特徴を指標にして頂けると幸いである。

猫でも同様の研究が行われ、術後モニタリングの精度が向上することを期待します。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37985867/


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