血管肉腫は、犬に発生する一般的な悪性腫瘍の一つである。そのため、当該疾患に関する疫学を研究し、最新の状態にアップデートすることは大変重要なことなのだ。そして、このような中で、今まさにGolden Retriever Lifetime Studyが進行している。高い人気を誇る大型犬、ゴールデンレトリバーの生涯を追跡し、彼らのライブイベントや健康問題をデータ化する研究が進んでいるのだ。果たして、ゴールデンレトリバーに起きる血管肉腫の疫学とは一体。欧州の大学らが以下に示す研究を発表した。
◆ゴールデンレトリバーの血管肉腫に関する疫学◆
・2022年9月の時点で研究対象となった3000匹以上(①)の診療記録を解析した
・約7.7%、230匹以上(②)が血管肉腫と診断された
・発生率は100匹あたり1.1件であった
・内臓に発生する血管肉腫が210匹以上(③)と最も一般的であった(①の約6.9%、②の約91%)
・③の約61%で脾臓に血管肉腫が発生していた
・③の約56%で心臓に血管肉腫が発生していた
・血管肉腫と「診断されずに生存する確率」は約4歳(100%)から低下し始めた
・12年後の確率は不妊手術を受けていないメスで約91%、未去勢オスで約73%、去勢オスで70%、不妊メスで約61%であった
・内臓に発生した血管肉腫と診断された個体の1年生存確率は約1.4%であった
上記のことから、大部分の個体は血管肉腫にならない一方で、その肉腫が内臓に発生した個体の予後は不良であることが窺える。また、4歳付近から血管肉腫の診断が増え始めることも分かる。よって、4歳以上のゴールデンレトリバーを飼うオーナーには、胸腹部の超音波検査を含む健康診断を受けるように提案することが望ましいと思われる。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37635246/