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特発性てんかんが疑われた犬の血清中胆汁酸濃度を測定した研究

投稿者:武井 昭紘

特発性、言い換えると原因不明の「てんかん」の診断は、除外診断によってなされる。つまり、実施できる臨床検査は全て行い、それらに異常を認めない、あるいは、異常を認めることが診断の要なのである。具体的には、国際獣医てんかんタスクフォース(International Veterinary Epilepsy Task Force;IVETF)が提唱する診断基準を「段階を追って」精査していく必要があるのだ。では実際のところ、その各段階で推奨されている検査項目は、どれほど重要なものなのだろうか。検査に油断を生じさせず確実に特発性てんかんを診断する上、その重要性を知ることは大変に有意義である。

 

そこで、イギリスはブリストルの大学および動物病院らは、診断基準の第1段階(Tier1、信頼レベル1)を満たした犬230匹状を対象にして、推奨される検査項目の一つ、血清中に含まれる胆汁酸の濃度(SBA)の測定値を解析する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆特発性てんかんが疑われた犬の血清中胆汁酸濃度◆
・肝パネル(ALT、ALP、BUN)と空腹時SBAに異常が認められない症例において陰性的中率は91%であった
・これは9%(100頭あたり9匹)で食後SBAが異常に上昇していることを意味している(肝臓疾患を見逃す)
・空腹時あるいは食後SBAの異常な上昇を頼りにすると、母集団の約3.9%(9匹)で重大な肝障害が発見された
・そのうち3匹(約1.3%)の空腹時SBAは正常であった

 

上記のことから、空腹時SBAのみを測定すると、特発性てんかんが疑われる犬に潜む肝臓疾患を見逃す可能性があることが窺える。よって、当該疾患を正確に診断するためには、食後SBAを測定することが望ましいと思われる。

アンモニアが測定された症例の約36%(13匹)で数値が上昇していたとのことです
(4匹は空腹時と食後SBAの上昇、9匹は食後SBAの上昇を認めています)。

 

参考ページ:

https://bvajournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/vetr.2585


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