ステロイド剤は、犬にも猫にも投与されることのある一般的な薬剤である。しかし、同薬剤を考えも無しに、気軽に使用することは推奨されていない。なぜならば、副作用というリスクがあるからだ。その代表格は、糖尿病と循環器への影響。そこで、疑問が浮かぶ。実際の臨床現場において、これらの副作用は起きているのだろうか。そして、その頻度は、ステロイド剤の使用を控える程に深刻なのだろうか。
冒頭のような背景の中、テキサスA&M大学は、テキサス州に拠点を構える猫専門動物病院を対象にして、メチルプレドニゾロンの投与と、糖尿病およびうっ血性心不全の発生状況を調べる研究を行った。なお、同研究では、①ステロイド剤を投与された猫のグループと②投与されていない猫のグループにおける発生状況が比較されており、①で起きた糖尿病を③ステロイド誘発性糖尿、うっ血性心不全を④ステロイド誘発性うっ血性心不全、②で起きた糖尿病を⑤自然発生した糖尿病、うっ血性心不全を⑥自然発生したうっ血性心不全と位置付けている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆メチルプレドニゾロンを投与された猫700匹以上に起きた副作用◆
・730匹以上が①に該当した
・300匹以上が②に該当した
・③は①のうち約3.8%、④は0.8%に発生した
・⑤は②のうち7.1%、⑥は1.9&に発生した
・メチルプレドニゾロンを繰り返し投与しても糖尿病やうっ血性心不全が発生しやすくなるということはなかった
上記のことから、ステロイド剤のうちメチルプレドニゾロンに限ると、糖尿病やうっ血性心不全といった副作用のリスクは高くないと考えられる。よって、今後、他のステロイド剤でも同様の研究が進み、最も副作用の少ない薬剤が特定され、安全・安心なステロイド療法が実現することを期待している。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37915779/