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僧帽弁閉鎖不全症の重症度を示す「指数」で予測する犬の予後

投稿者:武井 昭紘

中高齢の犬で一般的な心疾患である僧帽弁閉鎖不全症(myxomatous mitral valve disease、MMVD)は、うっ血性心不全(congestive heart failure、CHF)の原因となるとともに、死因の一つともなる病気である。そのため、当該疾患を抱える犬の予後を判定し、心不全に陥るタイミングや余命を推し量ることは重要とされているのだ。しかし、現代の獣医学では、そのタイミングも余命も予測することは難しいのが現状である。

 

そこで、世界の大学および動物病院らは、mitral regurgitation severity index (MRSI)という指数と、一般家庭で飼育されている犬860匹以上の予後を照らし合わせる研究を行った。なお、同研究では主にステージB2およびCに属する犬のデータが解析されている。また、①MRSIは、(②心拍数/120)x (③LA/Ao比) x (④年齢/10)x  100という計算式で求められている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆MMVDを抱える犬の予後とMRSI◆
・ステージB2のグループにおいてMRSIが156を超えるとCHFになるまでの期間が有意に短くなった(約3倍のリスク)
・その期間はMRSI>156で中央値407日であった(156以下は1404日)
・ステージB2のグループにおいてステージ関わらずMRSIが173を超えると生存期間が有意に短くなった(約4.3倍のリスク)
・その期間はMRSI>173で中央値868日であった(173以下は1843日)
・MRSIの計算式の③を椎骨左心房総計法(vertebral left atrial size、VLAS)に入れ換えても予後を予測できた
・②③④を個々にして予測するよりも①で予後を予測する方が的中率が高かった
・ステージCのグループの予後はMRSIで予測できなかった

 

上記のことから、ステージB2のMMVDに限るとMRSIは有用な指数であると言える。よって、今後、MRSIを低下させる治療法について議論され、当該疾患の予後がより改善していくことに期待している。

MMVDに対する治療内容とMRSIに関連性はなかったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37909399/


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