ニュース

胸部X線検査画像から人工知能に犬の僧帽弁閉鎖不全症のステージを判定させた研究

投稿者:武井 昭紘

心疾患を抱える犬の胸部X線画像には、正常な犬のそれと異なる所見が現れている。そのため、同検査は、犬の循環器診療で重要な位置を占めているのだ。しかし、その所見には獣医師個人の主観が含まれ、新人獣医師やオーナーが簡単に理解できるような客観性に乏しいのである。一方、話は変わるが、近年注目されている人工知能はデータに基づく客観的な判断を下せるとして、多種多様な業種・業態で活用が進んでおり、小動物臨床も例外ではない。つまり、心疾患を抱える犬の胸部X線検査を人工知能に委ねてみるという選択肢が浮上しても、何ら不思議ではない状況なのだ。

冒頭のような背景の中、ヨーロッパの大学らは、僧帽弁閉鎖不全症を抱える6歳齢以上の犬を対象にして、彼らの胸部X線画像を人工知能に学習させ、最終的にステージB1、B2、CとDの3つのグループを判別させる研究を行った。なお、同研究では、左右のラテラル、DV、VDの4方向から撮影した画像データが使用されている。すると、人工知能の精度を表すAUC(0.5~1.0の間の数値、1.0に近い程精度が高い)が、B1で0.87、B2で0.77、CとDで0.88となることが判明したという。

上記のことから、人工知能は犬の循環器診療をサポートするツールになり得ることが窺える。よって、今後、精度を更に向上させる研究が進み、誰しもが利用できる、理解できる犬の胸部X線検査が実現することを期待している。

研究に参加した犬のステージは、ACVIMのガイドラインに添って判定されております。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.1227009/full


コメントする