ヒトにも犬にも起きる不正咬合は矯正など歯科処置にて治療される。そのため、その治療の成功率を把握し、問題点を洗い出し、治療技術を向上させる策を考案することが重要とされているのだ。果たして、不正咬合は如何にして治療され、その経過はどうなっているのだろうか。
冒頭のような背景の中、アメリカの大学および歯科専門の動物病院らは、過去23年間(1999年~2021年)に歯科専門の動物病院を訪れた、且つ、舌側に転位した下顎犬歯を有する犬の診療記録を解析する研究を行った。すると、72例、歯の数にして118件のデータが集積され、以下に示す事項が明らかになったという。
◆舌側に転位した犬の下顎犬歯に対する治療と経過◆
・約8%の症例が軽度の転位、約34%が中程度、約58%が重度であった
・斜面板という矯正器具で転位が完全に解消した症例は全体の約71%を占めた
・歯の機能に問題が無いレベルまでの解消した症例は約25%を占めた
・約46%の症例は抜歯、歯肉切除、歯の形状を整えるといった処置が併用されていた
・約31%の症例では麻酔下で斜面板の設置を行っていた
・約19%の症例で斜面板の取り外しに際して合併症が発生した
・初回の治療で転位が改善した症例の約14%で再発が起きた(追加の治療が必要であった)
・治療期間の中央値は42日(11~174日)であった
・その期間(42日)での治療成功率は96%以上であった
上記のことから、斜面板による歯科矯正は、犬の不正咬合を解消する有効な治療法だと言える。よって、今後、成功率100%および合併症をゼロにする斜面板を設計する研究が進み、犬の歯科診療が更なる進化を遂げることを期待している。
参考ページ:
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.1224391/full