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生後9か月のポメラニアンの内臓に発生した嚢胞性病変の正体

投稿者:武井 昭紘

生後9か月のポメラニアンが、嘔吐を主訴に韓国の動物病院を訪れた。どうやら、倦怠感も伴っていたらしい。X線検査で腸管が頭背側に変異していること、腹部超音波検査で液体を貯留した嚢状の構造物が多数存在していることが確認された。本症例はメス。第一に子宮蓄膿症が疑われる状況であった。しかし、CT検査にて「それ」は否定された。一体、彼女の身に何が起こっているのだろうか。

CT検査から得られた所見では、子宮は勿論のこと、卵巣、膀胱、直腸にも嚢状病変が認められた。卵巣子宮全摘出術に臨む。併せて、膀胱の生検が行われた。両組織の病理検査では、嚢状病変を構成する細胞にリンパ管内皮の受容体が強く発現していることが判明した。複数の臓器に、いわば全身性にリンパ管腫が発生している状況であった。

症例を発表した韓国の大学および動物病院らは、本症例をリンパ管腫症(Generalized lymphatic anomaly、GLA)と断定した。また、複数の臓器に跨って嚢状病変が認められる場合は、当該疾患を鑑別リストに追加するべきだと訴える。読者の皆様が診察している犬の中に、子宮蓄膿症のようであって、それでいて様相・所見に異なる点がある症例は居るだろうか。もし居るならば、病理組織検査を検討することをお薦めする。

6ヶ月の経過を追跡した結果では、術後に体内に残った嚢胞のサイズに変化はなかったとのことです。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.1154210/full


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