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I型過敏症を起こした犬に対するステロイド剤の効果を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

ステロイド剤。この薬剤は、副作用というデメリットを置いておけば、非常に便利なものである。なぜなら、皮膚病に始まり、浮腫、炎症、内分泌疾患、代謝性疾患、血液疾患などの様々な病態を持つ動物に使用できるからだ。また、I型過敏症(救急疾患であるアナフィラキシーを含む)などにも対応できるのである。そこで、疑問が浮かぶ。ここまで多用されるステロイド剤には、どれ程の効果があるのだろうか。副作用に目を瞑ってでも利用する価値が、どこまであるのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、イリノイ大学らは、過去12年間に同大学付属動物病院を訪れ、且つ、I型過敏症の治療を受けた犬を対象にして、彼らの診療記録を解析する研究を行った。すると、86例のデータが集積され、以下に示す事項が明らかになったという。

◆①や②を起こした犬に対するステロイド剤の効果を調べた研究◆
・19例は①アナフィラキシーを起こしていた
・67例は②軽度の皮膚病変を有していた
・発生率は①で0.04%、②で0.15%であった
・オスに比べてメスの割合が有意高かった(1:2.3)
・ワクチン接種は①の約58%、②の約28%を占めていた
・全体の約49%にステロイド剤とH1ブロッカーが投与されていた
・約40%はH1ブロッカーのみを投与されていた
・約7%はステロイド剤のみが投与されていた
・大多数の症例は回復した
・1例が安楽死されていた(合併症のため)
・死亡リスクを上げるファクターは呼吸器症状、チアノーゼ、循環器のショックであった
・病因、臨床症状、治療(ステロイド剤)、転帰に関連性は認められなかった

 

上記のことから、I型過敏症の予後は良好だと考えられる。しかし一方で、ステロイド剤の投与は良好な経過とは関連が無いことも分かる。よって、今後、死亡リスクを上げるファクターへの対応をメインとした、且つ、ステロイド剤に代わる治療法が再考され、I型過敏症の生存率が100%になる未来が訪れることを期待している。

①に属する症例も含めると、全体で86%、74例に皮膚病変があったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37578030/


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