お尻(肛門)に体温計を入れて体温を測定することを嫌がる犬猫を見て思う。他に手段はないものだろうか。例えば、腋。ヒトと同じように腋で体温(腋窩温)を測定できれば、あの嫌がり方は和らぐのではないだろうか。しかし、そこには課題がある。それは、腋窩温の利便性と精度だ。果たして、直腸温と比べて腋窩温は利用価値が高いのだろうか。
冒頭のような背景の中、ウィスコンシン大学は180匹以上の犬猫を対象にして、直腸温と腋窩温の測定に纏わる時間を計測し、その数値を比較する研究を行った。なお、同研究では、体温側定の時間を①測定者が動物に近づき体温測定が開始されるまでの時間、②体温測定が開始され体温計に結果が表示されるまでの時間、③体温計を収めて表示された数値を記録するまでの時間の3つに分けている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆犬と猫の腋窩と直腸で体温を測定する時に掛かる時間◆
・腋窩温で①と①②③の総計が有意に短かった(スコティッシュフォールドを除く)
・直腸温に比べて腋窩温で①②③の総計が有意に短いことは①の短縮によるものだった
・犬の両群では③に有意差はなかった
・猫の腋窩温の③は直腸温に比べて長い傾向にあった
上記のことから、直腸温よりも腋窩温の方が所要時間が短いことが窺える。よって、今後、腋窩で正確に犬猫の体温を測定する方法について議論され、彼らにとっても獣医師やオーナーにとってもスムーズな、緊張が走る時間が短い体温測定ができるようになることを期待している。

本研究では、短毛種の猫に比べて長毛種の直腸温における①②③の総計は有意に長いことも分かっております。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37505879/