消化管内異物(Gastrointestinal foreign body、FB)は、犬猫に良く見られるトラブルで、症例の病状や異物のサイズに応じて緊急の外科手術が適応されることのある病気として知られている。しかし、猫のFBに関する研究データは乏しく、当該疾患に付き纏うリスクについては不明な点が多いのが現状である。
そこで、ジョージア大学は、過去12年間(2009年~2021年)において附属動物病院でFBに対する摘出手術を受けた猫を対象にして、彼らの周術期の診療記録を解析する研究を行った。なお、同研究では、FBを①linear foreign body(ヒモ状異物)と②discrete foreign body(消化管内に異物が散らばった状態)の2つのグループに分け、それぞれのデータを比較している。すると、50件を超える症例が集まり、以下に示す事項が明らかになったという。
◆消化管内異物に対する摘出術を受けた猫の経過・転帰◆
・①は18件、②は38件で構成された
・全例が術後まで生存した
・敗血症性腹膜炎を起こす症例もいなかった
・術後に敗血症性腹膜炎を起こす、あるいは、死亡するリスクは5.2%未満と推定された
・②に比べて①の症例のBCS、ALB、麻酔スコア(ASA)、医療費の総計は有意に高かった
・②に比べて①の症例の手術時間は有意に長かった
・①の症例は手術部位感染を起こすリスク、および、術後に抗生剤が投与される可能性が高かった
上記のことから、FBを抱える猫の予後は良好であることが窺える。しかし、そうであっても①に該当する症例には、医療費も含めた様々なリスクが生じることも分かる。よって、何らかのヒモ状の物体で遊び、それに執着する猫を飼育する世帯では、その物体の代替品となる「安全な」オモチャを見付けることが望ましいと思われる。

同大学は、①の手術時間が長いことが手術部位感染のリスクを上げ、入院期間が長くなっている(結果、医療費が嵩む)と推測しています。
参考ページ:
https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/1098612X231178140