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乳腺腫瘍を抱えた犬の予後と好中球/リンパ球比の関連性を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

一次診療施設で良く遭遇する犬の乳腺腫瘍は多様な悪性度を示す病気で、生検サンプルや外科的切除した腫瘍組織を用いた病理検査をもって「その悪性度」を評価することが通例となっている。つまり、当該疾患を抱える犬の予後を判定する非侵襲的な手法が乏しいのが現状なのだ。一方、話は変わるが、好中球/リンパ球比(neutrophil to lymphocyte ratio、NLR)は様々な疾患の予後を判定し得るマーカーとして報告が上がっている。総合すると、犬の乳腺腫瘍においても、NLRは有用な予後判定マーカーとなるかも知れないのである。

冒頭のような背景の中、メキシコ国立自治大学は、臨床上健康な犬と乳腺腫瘍の犬の診療記録を解析する研究を行った。なお、同研究で活用されたデータは、年齢、品種、腫瘍のサイズ、組織学的グレード、手術後の生存期間に加えて、NLR、そして、全身状態や炎症の評価に用いられるアルブミン対グロブリン比 (albumin to globulin ratio、AGR)である。すると、AGRは悪性度(予後)を示唆することはない一方で、NLRの数値が高いほど生存率が低下することが判明したという。

上記のことから、NLRは乳腺腫瘍を抱えた犬の予後を判定するマーカーになり得ることが窺える。よって、今後、NLRを低下させる治療法について議論され、予後が悪いと判定された乳腺腫瘍の犬の生存率が改善していくことに期待している。

NLRが>5の時に、生存率はその数値に従って低くなるとのことです。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.1187271/full


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