国立環境研究所は、絶滅危惧種などの細胞を凍結保存するタンクの分散設置を進めており、茨城県つくば市にある同研究所のほかに、沖縄県と北海道にタンクを分散して管理する。
記事によると、同研究所は2002年、絶滅危惧種の細胞などを保存する「タイムカプセル化事業」を開始。保存した細胞を使って鳥インフルエンザのウイルスの病原性を調べ、希少な鳥類に高い病原性を示す可能性を突き止め、飼育施設で感染症対策が強化されたケースもあった。
ただ、11年の東日本大震災では同研究所の実験棟が被災し、温度管理システムが停止するなどタンク内の温度保持が危機的な状況に陥った。このためリスクを低減するタンクの分散化が課題となっていた。
そこで、同研究所は分散化の第一歩として今年3月、沖縄県の沖縄美(ちゅ)ら島財団にタンクを新たに設置。北海道ではクラウドファンディングで資金(目標額700万円)を募り、今年度内にタンクの管理を北海道大で始める予定だ。
同研究所のタンクでは、環境省レッドリストの絶滅危惧種を含む計127種の細胞や生殖細胞を氷点下160度で保存している。新たに設置したタンクでは、沖縄はヤンバルクイナ、北海道はオオワシなど、それぞれの地域に生息する希少種の細胞を中心に保存し、地元の研究機関などで活用しやすいようにする。
同研究所の大沼学・主幹研究員は「管理の体制を強化して、絶滅危惧種の保存を進めていきたい」と話している。
https://www.yomiuri.co.jp/science/20230626-OYT1T50324/
<読売新聞オンライン 2023/06/28>