①マダガスカル原産の小型犬コトン・ド・テュレアール(4歳齢、去勢オス)と②マルチーズ(6歳齢、去勢オス)の上眼瞼に境界明瞭で硬結した腫瘤が発生した。①の腫瘤は再発したもので、切除され病理組織検査に回されていた。結果は、マイボーム腺の炎症だった。②には眼瞼炎をステロイド剤で治療した経歴があった。外見上、腫瘍も疑われる病変の正体は一体何であろうか。炎症を引かせることに主眼を置いた治療が始まった。
2例ともに抗生剤とステロイド剤が投与された。①の腫瘤のサイズは治療当初、大きな変化はなかったが、ステロイド剤を漸減しつつ抗生剤を中止すると大きくなり、化膿性の分泌物を生じた。対して、②の腫瘤のサイズは大きくなり続けた。そこで、改めて細胞診と細菌検査が行われた。球菌を伴った好中球主体の炎症。どちらの症例からもStaphylococcus pseudintermediusが検出された。ステロイド剤を中止し、薬剤感受性試験に基づいて抗生剤が投与されると、腫瘤は急速に縮小し、遂には完全に消失した。幸いなことに再発もなかった。
症例を発表した韓国の大学および動物病院らは述べる。『例え眼瞼の腫瘍に見えたとしても、その腫瘤を内科的に管理する可能性を検討するべきだ』と。読者の皆様は今、再発に悩む、あるいは、コントロールが難しい眼瞼の腫瘤を診察しているだろうか。もし診察しているならば、基本に立ち返り、細胞診や細菌検査からリスタートをしてみると良いかも知れない。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36537865/