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障害を抱える動物医療従事者が直面する課題を浮き彫りにする調査がスタート

投稿者:武井 昭紘

疲れやすい。寝ても疲れが取れない。眠れない。働きづらさや生きづらさを感じる。前二者は、大学生活という環境から社会人へと進んだ新卒の獣医師には珍しくない体調の変化だ。無論、慣れない職場環境に飛び込み、そこで独自のルールに従いつつ激務に揉まれて、苦手なペットオーナーや上司にも対応しなければならない上に、日々勉強することばかりといった状況になるのだからストレスは大きく、疲れることは当然と言えば当然である。しかし、後二者の話は別だ。新社会人、臨床現場で働き始めた新卒獣医師とはいえ、注意をする必要がある。もしかしたら、そこには、本人にしか分からない、または、本人も認識していない障害が潜んでいるかも知れないからだ。

冒頭のような背景の中、その障害を抱える動物医療従事者が直面する課題を浮き彫りにし、それを多様性として捉えて理解するべく、イギリスで働く獣医師の登録を統括する王立獣医師会(Royal College of Veterinary Surgeons、RCVS)と障害や慢性疾患を持つ獣医師のサポートを活動目的とするBritish Veterinary Chronic Illness Support(BVCIS)は、獣医学部生および獣医師の考え方や経験について訊ねるアンケート調査を開始した。なお、同調査には障害当事者は勿論のこと健常者も参加可能であり、その結果は、雇用主(動物病院を運営し獣医師を雇う者)や教育関係者(獣医学部生を指導する者)の障害に対する理解が深まるように活用されるとのことである。

2019年に行われたRCVSの調査によると、獣医師および動物看護師の約7%が障害に苦しみ、できる仕事の幅に制限が生じてしまっているという。しかし、RCVSとBVCISは述べる。この割合は実際のところ、もっと高いだろうと。そして、障害を抱える彼らが働きやすい環境の労働力は強固なものになるだろうと。よって、今回紹介した調査が、健常者と障害当事者が共存し協力し合う、誰にも優しく安心して働ける動物病院の職場環境の実現に繋がることを願っている。

本調査のアンケートは、雇用に関する研究所(Institute for Employment Studies、IES)が主導して実施されるとのことです。

 

参考ページ:

https://mrcvs.co.uk/en/news/22488/Vet-professionals-invited-to-participate-in-disability-survey


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