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米国農務省が認めた犬のパルボウイルス感染症を治療するモノクローナル抗体

投稿者:武井 昭紘

犬のパルボウイルス感染症は、激しい嘔吐や下痢を呈して脱水し、元気や食欲を失って衰弱していくとともに、白血球減少を起こして日和見感染の危機が生じる感染症である。そのため、これらの症状に対する支持療法がなければ、90%以上の確率で亡くなってしまうのだ。そして、アメリカでは、このような恐ろしい病気が年間に33万件も発生していると推計されている。それでも、やはり支持療法以外に有効な治療法が無いのが現状である。しかし、支持療法だけで数十万件もの症例に相対するのは心許ないというのが正直なところだろう。では、どうするか。それが獣医学の課題となつている。

冒頭のような背景の中、世界的な医薬品メーカーであるエランコ社は、犬のパルボウイルス感染症を治療する医薬品をリリースするライセンスを取得したことを発表した。なお、同薬はモノクローナル抗体で、パルボウイルス感染症に関連した死亡率を低下することは勿論のこと、嘔吐などの症状が消失するまでの期間を短縮する効果を有しているという。この事実が発表されたのは5月3日。アメリカ各州の承認が得られれば、数週間以内に流通させられるとのことだ。

エランコ社は述べる。モノクローナル抗体が開発される以前のパルボウイルス感染症の治療は支持療法のみで、成功する保証は無く高リスクであり、犬のオーナーのみならず動物病院スタッフにも多大なストレスを与えるものだったと。果たして、同薬は「その実状」を打破するキッカケになるか。パルボウイルス感染症から回復した犬の報告が1件でも多く、いや何万件も数十万件も上がってくることを願っている。

同薬は8週齢以上の犬に投与できるとのことです。

 

参考ページ:

https://www.businesswire.com/news/home/20230427005591/en/Elanco-Announces-Breakthrough-Treatment-for-Deadly-Canine-Parvovirus


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