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フロルフェニコールとテルビナフィンを含有する外耳炎治療が処方された犬に起きる乾性角結膜炎

投稿者:武井 昭紘

犬の眼科診療で良く遭遇する乾性角結膜炎(keratoconjunctivitis sicca、KCS)の原因の一つに涙腺を支配する神経のトラブルが挙げられ、そのトラブルは一般的に中耳炎に起因するとされている。一方、話は変わるが、長時間作用する外耳炎治療薬は鼓膜や内耳にダメージを与えると訴える研究者が居る。つまり、外耳炎の治療が神経トラブルに伴うKCS(neurogenic keratoconjunctivitis sicca、nKCS)の引き金になっていると仮説が立てられるのだ。

 

冒頭のような背景の中、欧米の大学および動物病院らは、フロルフェニコールとテルビナフィンを含有する外耳炎治療薬(商品名はクラロ、ネプトラ、オスルニア)の使用後1日以内にnKCSを発症した犬29匹の診療記録を解析する研究を行った。なお、同研究では、シルマー検査で15 mm/分未満をもってKCSと判断されている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆特定の外耳炎治療薬を使った犬に起きるnKCS ◆
・80%以上の症例の涙液量が回復した
・回復までの期間は中央値で82日(19〜482日)であった
・約70%の症例に角膜潰瘍が発生した
・眼科専門医への紹介と重度の角膜潰瘍は涙液量が回復するまでの時間が遅くなることに関連していた

 

上記のことから、涙液量の回復に要する時間が最低でも3週間弱と長いが、特定の外耳炎治療薬を使ってから1日以内にnKCSを発症した犬の予後は良好だと言える。また、角膜潰瘍が進行する前にに早期にnKCSに対応することが重要なようだ。よって、万が一、読者の皆様が担当する犬にnKCSが起きた場合は、早期に診断を下すとともに、角膜潰瘍の有無をチェックして、その治療にあたって頂けると幸いである。

クラロおよびネプトラはモメタゾン、オスルニアはベタメタゾンというステロイドを含有しております。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36350754/


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