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原因不明の猫の汎血球減少症を誘発する原因について調べた研究

投稿者:武井 昭紘

2021年春頃イギリスにて、年に1回報告される程度であった猫の汎血球減少症の発生件数が何十倍にも跳ね上がった。そのため、同国の政府および大学らは、当該疾患の原因を掴むべく奔走した。酸素を運び、血を止め、免疫機能を維持する血球が全てが減少しては罹患猫の多くが命の危機に瀕する。そう危機感があったのだ。しかし、原因は分からなかった。キャットフードに含まれる成分が疑われるも、特定には至っていなかった。果たして、原因は何なのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、王立獣医科大学(Royal Veterinary College、RVC)は、2種類以上の血球が減少し、且つ、その原因が突き止められていない猫580匹を対象にして、彼らの診療記録を解析する研究を行った。なお、同研究では、各飼育世帯におけるCOVID-19の発生状況、また、当該疾患の急増に伴ってリコールされたキャットフードの使用状況も調べられている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆原因不明の猫の汎血球減少症の疫学◆
・致死率は約63%であった
・約94%の症例の食餌内容が確認できた
・86%の症例がリコールされたフードを食べていた
・約9%はリコール対象ではないフードを食べていた
・約5%の食餌内容は不明だった
・リコールされたフードにはトリコテセン系マイコトキシンが含まれていた(70%以上で基準値をオーバー)
・同物質はリコール対象ではないフードからは検出されなかった

 

上記のことから、トリコテセン系マイコトキシンが汎血球減少症の原因として最も疑わしいと考えられる。しかし一方で、同物質を含まないフードを食べている猫も汎血球減少症を発症する場合があることも分かる。よって、今後、リコールされたフードの生産ラインと管理の改善が図られるとともに、後者の猫が発症している理由を探究する研究が進み、致死的経過を辿る可能性が高い汎血球減少症が撲滅されることに期待している。

370件以上の動物病院から症例データが集積されたとのことです。

 

参考ページ:

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jvim.16615


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