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妊娠中の女性がトキソプラズマに感染するリスクを上げるファクターに関する研究

投稿者:武井 昭紘

猫とヒトの間で伝播されるズーノーシスの一つに挙げられるトキソプラズマは、妊娠している女性に感染すると、女性は無症状で経過する一方で、胎児(新生児)に後遺症を起こすことがある恐ろしい病原体である。そのため、妊娠中の女性がトキソプラズマに感染するリスクを上げるファクターを明らかにし、それに応じた防疫対策を講じることが重要とされているのだ。

 

冒頭のような背景の中、世界の獣医科大学らは、エジプトの首都カイロの北東に位置するシャルキーヤ県で暮らす①妊娠中の女性と②猫(①が飼育している個体)を対象にして、トキソプラズマの感染状況(感染するリスクに関与するファクターを含む)を調べる研究を行った。なお、同研究では、①の血液サンプル、②の糞便サンプルを用いたリアルタイムPCRでトキソプラズマの検出をしている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆妊娠中の女性がトキソプラズマに感染するリスクを上げるファクター◆
・①の約28%、②の17%から病原体が検出された
・加熱処理されていない生乳を飲むこと、猫(野良猫も含む)に接触することが感染リスクを上げていた
・加熱された肉類を食べている女性(約25%)よりも生肉を食べている女性(60%)で陽性率が高かった
・猫と接触した後に手洗いをしないと感染リスクが6倍に上昇していた

 

上記のことから、特定の食品の飲食、猫との接触とその後の手洗いがトキソプラズマの感染リスクに関与していることが窺える。よって、妊娠中の女性は、加熱処理された乳製品や肉類を食べることに注意を払い、猫との接触を避けることが望ましいと思われる。また、既に猫を飼っている場合は、彼らと接触した後に必ず手洗いをすることに留意することが重要だと言える。

猫を飼っていない妊娠中の女性は、万が一、猫が飼いたくなっても出産後まで我慢することをお薦め致します。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.1147614/full


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