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マダニが媒介するライム病を予防するためのmRNAワクチンの開発

投稿者:武井 昭紘

マダニが媒介するライム病は、B. burgdorferiという細菌によって引き起こされる皮疹、神経系症状、関節炎などを主体とする感染症で、アメリカでは毎年47万件を超える症例が報告され、160万人が慢性症状に苦しんでいる病気である。そのため、この細菌に感染しないこと、即ちマダニに咬まれないことが大変に重要な予防法と言われているのだ。また、仮にマダニがヒトを咬んでも36時間以内にB. burgdorferiが伝播されることは稀であることから、「マダニに咬まれたことに気が付く」ことが大切だと考えられている。しかし、マダニは皮膚の感覚を麻痺させる物質を放出して「人知れず」吸血をするため、気が付くことは困難だとされているのである。

そこで、アメリカの大学らは、マダニに咬まれたことに気が付くための、そして、免疫機能でマダニと闘うためのワクチンを開発する研究を行った。なお、同研究では、マダニ(Ixodes scapularis)の唾液中に含まれるタンパク質をコードするmRNAワクチンをモルモットに接種し、マダニに咬まれた時の生体反応と感染防御効果を調べている。すると、ワクチン接種が済んだモルモットの皮膚はマダニに咬まれた直後に紅斑を起こし、マダニの吸血を妨害すること(吸血量の減少と早期の脱落)が判明したという。また、その結果、B. burgdorferiの感染も防げることが分かったとのことである。

上記のことから、マダニに対するmRNAワクチンは、ライム病の発生を抑え込む効果を持っていると考えられる。よって、今後、ヒトおよび犬に接種できるワクチンが開発され、当該感染症の発生件数がゼロに近づくことを期待している。

このワクチンがSFTSの発生も抑えることを願っております。

 

参考ページ:

https://www.science.org/content/article/hope-lyme-disease-new-vaccine-targets-ticks

https://www.science.org/doi/10.1126/scitranslmed.abj9827


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