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卒業を控えた獣医学部生が留置処置を成功させるためのファクターを調べた研究

投稿者:武井 昭紘

静脈内留置(intravenous catheters、IVC)。それは、小動物臨床を志す獣医学部生にとって、是非とも習得したい基本スキルである。しかし、このスキルは手をこまねていて習得できる程に簡単なものではない。何度もチャレンジし、失敗と成功を繰り返し経験して手に入れるものなのである。では実際のところ、本当に経験は物を言うのだろうか。あるいは、他に習得するするためのファクターが他にも存在しているのだろうか。それを明らかにすることは、学生および新人獣医師の教育の効率化に寄与するものと思われる。

冒頭のような背景の中、北米の獣医科大学らは、卒業を控える獣医学部生のIVC成功率に影響を与えるファクターを特定する研究を行った。なお、同研究では、救急医療の現場でIVCにチャレンジした学生を対象にして、チャレンジ1回ごとに匿名性のアンケートに回答してもらう形式を採用しており、経験レベル(自己評価)、動物種、IVCを設置する場所の指示の有無、IVCを設置した場所、保定具の使用、カテーテルの種類、鎮静剤の使用、および、指導されたことに対する受け止め方とともに、失敗と成功の記録がデータ化されている。すると、トータルで250回以上のIVCの成功率は60%程度で、サフェナよりも橈側皮静脈のIVCの方が成功する可能性が有意に高いことが判明したという。また、この「血管の違い」以外に、聞き取りをした項目の何れもIVCの成功率と関連していないことも分かったとのことだ。

上記のことから、獣医学部生が病院実習にてIVCを習得することが難しいと考えられる(基本スキルとされるIVCの成功率が60%では心許ない)。よって、今後、成功率を向上させる指導方法の考案、IVCを設置しやすい犬種・猫種の特定、IVCの成功率を挙げるカテーテルの開発などを目指す研究が進められ、学生および新人獣医師の教育がスムーズになること、即ち、動物を助けられるスキルを持った獣医師が短期間で育成できるようになることを期待している。

学生たちが参加した実習の期間は3週間で、一度のIVCで許されたチャレンジは2回までだったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35797484/


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