欧米の犬糸状虫症に関するガイドラインによると、Dirofilaria immitis(フィラリア)に犬が感染したと証明(診断)するには、血液中に含まれるミクロフィラリアおよびフィラリア成虫の抗原の存在を確認することが重要だとされている。一方、リーシュマニア症など一部のベクター媒介性感染症では、血清タンパク分画が診断、そしてモニタリングに有用だとされている。
そこで、イタリアの獣医科大学らは、フィラリアに自然感染した犬30匹を対象にして、彼らの血清タンパク分画を解析する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆フィラリアに感染した犬の血清タンパク分画◆
・約63%の症例でアルブミンの割合が低くなる
・80%でβグロブリンの割合が高くなる
・絶対値(g/dL)において低アルブミン血症は約13%、総グロブリンの増加は20%に認められた
・またαの増加は約7%、βの増加は約53%、γの増加は約27%の症例に認められた。
・ドキシサイクリンで治療された症例ではアルブミン、αが増加し、アルブミン/グロブリン比が上昇した
・一方、総グロブリンとβは減少した
上記のことから、フィラリアの感染とその治療によって、犬の血清タンパク分画は変化することが窺える。よって、今後、この変化を利用したモニタリング方法が考案され、犬糸状虫症に対する診療レベルが向上することを願っている。また、犬糸状虫症に酷似した症状を惹起する犬の感染症が発生している地域での鑑別診断に、血清タンパク分画が活用されることを期待している。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35597691/