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アメリカにおけるペットのCOVID-19の疫学および臨床的特徴を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

世界各地のニュースや症例報告を総合すると、ペットとして人気の高い犬や猫も新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染すると考えられ、その症例の一部はヒトからウイルスを伝播されていることが窺える。また、発生頻度は稀と言って過言ではないだろうが、猫からヒト(獣医師)へウイルスが伝播したケースも報告されているのだ。つまり、同ウイルスの防疫対策は、ヒトおよびペット双方の疫学や臨床的特徴を基に講じられることが望ましいと思われるのである。

 

そこで、アメリカの政府および大学らは、2020年3月~2021年12月の間に33の州で確認された犬猫の感染事例204件のデータを解析する研究を行った。なお、同研究で扱われたデータは、①COVID-19を発症している疑いがあるとして専門機関に連絡があった事例と、②特定の集団または地域に絞って感染状況を調査して発覚した事例の2つのグループで構成されている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆アメリカにおけるペットのCOVID-19の疫学および臨床的特徴◆
・①の94%はCOVID-19を発症したヒトとの接触があった
・臨床症状が認められる割合は①で74%、②で27%であった
・臨床症状は犬で平均12日、猫で平均15日続いた
・ヒトの発症時期とペットの発症時期は平均して10日間のタイムラグがあった
・SARS-CoV-2の核酸(RNA)は犬猫がウイルスに曝露されてから3日後に初めて検出可能となった
・抗体は曝露から5日後に検出可能となり、力価は犬で14日目、猫で9日目に最高となった

 

上記のことから、COVID-19を発症したヒトと犬猫が接触することが「彼らのCOVID-19」に深く関連していることが分かる。よって、予防であれ何らかの病気の治療であれ診察を担当する犬猫のオーナーがCOVID-19となった場合は、ペットとの接触をさけるように指示し、必要とあれば動物病院が犬猫を預かると提案することが望ましいと思われる。また、同研究で数値化された臨床症状が続く期間、タイムラグ、核酸・抗体が検出されるタイミングなどを参考に、日々の診療業務にあたって頂けると幸いである。

犬の事例は95件、猫の事例は109件であったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36595371/


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