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80品種もの犬の難産と帝王切開に纏わるデータを解析した研究

投稿者:武井 昭紘

犬の繁殖において、難産は一般的な問題であり、且つ、母体も勿論のこと胎児の命も危機に瀕するかも知れない重大な問題である。そのため、難産のリスクが高い犬種では緊急の帝王切開を避けるべく、計画的に帝王切開を実施する場合がある。では実際のところ、①計画的な帝王切開と②緊急の帝王切開では、どちらがリスクが高いのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、イタリアの大学は、犬の帝王切開に関するデータを解析する研究を行った。なお、同研究では、80品種420匹以上の母体と900匹弱の胎児が対象となっており、以下に示す事項が明らかになったという。

◆80品種もの犬の難産と帝王切開に纏わるデータ◆
・1匹の母体当たりの平均産仔数は2.1±1.1であった
・死産する確率は約7%であった
・190匹以上の胎仔が帝王切開で生まれた
・うち①が18%、②が82%であった
・同腹仔が1~2匹、または、12匹以上で帝王切開のリスクが有意に上がった
・帝王切開の経験がある母体は次回の出産でも帝王切開となるリスクが高かった(4倍)
・高齢で初産をする母体では②のリスクが有意に高かった
・①と比べて②では死産のリスクが有意に高かった
・②のタイミングは死産のリスクを有意に左右していた
・ノーリッチテリアで帝王切開のリスクが高く、ゴードンセッターで低かった

 

上記のことから、帝王切開における死産の確率は低いものの、特定の条件を満たす母体ではリスクが上がることが分かる。よって、今後、帝王切開の経験がある母体や高齢で初産の母体に対する対応、ノーリッチテリアの繁殖計画の見直し、②のタイミングなどについて議論が深まり、死産の確率が限りなくゼロに近い犬の帝王切開が実現することを期待している。

ゴードンセッターで帝王切開の発生率が低い理由についても研究が進むと、犬の難産に対する新たな見解が生れるかも知れません。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.934273/full


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