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犬と猫の消化管通過時間を比較した研究

投稿者:武井 昭紘

胃腸の調子が悪く嘔吐や下痢をする、あるいは、消化ができない異物を飲み込んだ犬や猫を診察する時、フードや異物を食べたタイミングと、それらが消化管を通過する時間に焦点が当てられることがある。果たして、犬猫が飲み込んだ物はどうれくらいの時間を掛けて通過するのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、欧米の大学らは、臨床上健康なビーグル7匹にカプセルを飲ませて消化管の通過時間(gastrointestinal transit time、GITT)を計測し、そのデータを過去に報告された猫のGITTと比較する研究を行った。なお、同研究では、カプセルを飲ませるタイミングを2通り設けており、一方は①20時間の絶食後にカプセルを飲ませ、その5時間後にフードを給餌するもので、もう一方は②24時間の絶食後に1時間の食餌タイムを犬に与えてカプセルを飲ませるものである。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆犬の消化管通過時間の比較◆
・食道の通過時間は①で3±5 分、②で13±37分であった
・胃の通過時間は①で31±60 分、②で829±249分であった
・腸の通過時間は①で795±444 分、②で830±368分であった
・各通過時間の総合は①で828±439分、②で1671±513分であった
・これは猫のものよりも有意に短かった(①2441±1359分、②3009±1220 分)

 

上記のことから、犬のGITTは猫のそれより短いことが分かる。また、フード食べるタイミングでも変化することが窺える。よって、これらのデータを参考にして、まだ臨床経験の浅い新人獣医師は犬の消化器診療にあたって頂けると幸いである。

リンク先の論文には消化管内のpHについても記載されておりますので、ご参照下さい。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36044730/


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