全身性の高血圧症は、文字通り全身に様々な症状を発現する。その中でも、眼に認められる症状は、血圧検査と同程度に非侵襲的に得られる所見として優れている。では、その症状とは何であろうか。身体検査が重要な情報となる動物医療に従事する獣医師は、特に新人獣医師は、それを把握しておく必要があるものと思われる。そこで、アメリカはニュージャージー州の眼科診療を担う動物病院がオンライン上に公開している、猫に関する記事を紹介したい。なお、同記事によると、詳細は以下の通りである。
◆高血圧症に伴って起きる猫の眼の変化を纏めたウェブサイト◆
①視力低下または失明:散瞳、瞳孔反射の低下、迷路試験での異常を伴う場合がある
②網膜の出血:血管の透過性が亢進した影響で起こり、網膜剥離の引き金になる
③前眼房出血(眼内出血):高血圧によって虹彩や毛様体の血管が破綻した状態で、重症だと眼底の様子は見えなくなる
④網膜剥離:網膜に虚血性病変が生じる前に治療が行えれば、回復が見込める
⑤網膜の血管の蛇行と浮腫:高血圧によって生じる物理的な圧力によって起こる構造変化
腎臓や心臓の病気のためか、猫の高血圧症は一次診療でも良く遭遇する疾患である。そのため、高血圧症の存在を一早く認識し、高血圧に対する治療の必要性を検討する上で、彼らの眼の変化をチェックすることは重要だと言える。皆様は、前述した①~⑤の所見を実際に眼にしたことはあるだろうか。もし、「ない」ということならば、健康診断で来院した猫の眼を良く観察して欲しい。そして、これらの症状を体感し、日常の診療に活かして頂けると有難い。
参考ページ:
https://www.cliniciansbrief.com/article/top-5-ocular-consequences-systemic-hypertension