ヒトの1型糖尿病の発症は、標高が高いこと、日照時間が少ないこと、寒冷な気候であること、冬であることに関連していると言われている。そこで、疑問が浮かぶ。動物の糖尿病は、前述した条件の下で発症しやすくなるのだろうか。糖尿病という病気を深く理解する上で、その疑問を解決することは大変に意義があると言える。
冒頭のような背景の中、ペンシルバニア大学は、アメリカ国内における犬の糖尿病の季節的および地理的な特徴を調べる研究を行った。なお、同研究では、ケネルクラブ、学術機関、高次診療施設、ソーシャルメディアなどから幅広く情報が集積され、①発症年齢が365日齢未満の糖尿病と②365日齢以上の糖尿病に関するデータが纏められている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆犬の糖尿病における季節的および地理的な特徴◆
・①の症例が27件、②の症例が933件であった
・①の有病率は約3%であった
・①は純血種・雑種ともに認められた
・冬(12月~翌年2月)に診断されている症例が多かった
・北部(西部、北部、南部、中部に区分されている)で診断されている症例が多かった
上記のことから、寒冷な気候、そして寒冷な気候を有する地域で犬の糖尿病は良く診断されていることが分かる。また、①の発症は純血種の遺伝子が関与している可能性が低いことも分かる。よって、今後、寒冷な気候によって糖尿病を発症するメカニズムが解明され、新しい食餌管理法や環境温度設定の概念などによって糖尿病を予防する方法が考案されることに期待している。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35930583/