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両後肢に壊死が起きた9歳齢のボクサーに感染していた病原体

投稿者:武井 昭紘

9歳齢のボクサー(不妊メス)が、タイの首都バンコクに位置するチュラーロンコーン大学を訪れた。症例は痩せ衰え、両後肢の跛行を呈していた。そして、その足には壊死が起きていた。穴が開いた皮膚(傷口)からは、線状の虫体らしきものが見えていた。

 

血液検査、超音波検査いずれにおいても、フィラリアの寄生を示唆していた。右心系および肺動脈は勿論のこと、驚くべきことに、腹部大動脈、外腸骨動脈、大腿動脈に「その存在」が確認できた。症例は、フィラリア成虫を摘出する手術に臨む。全てを摘出したとは言い難いが、心臓から8匹、大腿動脈から5匹の成虫が取り除かれた。しかし、皮膚の壊死は止まらなかった。加えて、大静脈症候群に敗血症を発症。症例は亡くなった。

 

剖検にて、25匹のフィラリア成虫が発見された。

壊死部に心臓、肺、大腿動脈。至る所にDirofilaria immitisが寄生していた。フィラリアは何故、大動脈や大腿動脈、果ては後肢の皮膚に「居た」のだろうか。「そこ」に至るまでの移行ルートとは一体。以前に報告された猫の大腿動脈寄生例とともに、メカニズムが解明されていくことに期待している。

剖検では、心房中隔欠損の証拠は得られなかったとのことです。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.868115/full


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