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犬猫の高所落下症候群に関する文献をレビューした論文

投稿者:武井 昭紘

高所落下症候群とは、2階以上の高さから落下し、頭部・胸部・腹部に外傷を負ったり、整形外科学的な損傷を生じることと定義されており、窓際に佇んでいる時、交配している時、獲物を追いかけている時など、様々なタイミングで起きることが知られている。また、体重が軽く、立ち直り反射が優れている猫は、犬と比べて高所落下症候群が重症化しづらいとされている。では実際のところ、同症候群は、どのように診断・治療され、どのような経過を辿るのだろうか。いざ目の前に高所から落下した動物が現れた時の対処方法を心得る必要があると思われる。

 

冒頭のような背景の中、アメリカのアニマルメディカルセンターおよびブルーパール動物病院グループらは、過去に報告のあった犬猫の高所落下症候群に関する文献をレビューする研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆犬猫の高所落下症候群◆
・若齢の個体に多く発生する
・気候が温暖な時期に発生しやすい
・身体検査、X線検査、超音波検査、CT検査で外傷や損傷が確認されている
・無数の外傷を伴った気胸、胸腹水、骨折、顔面や口腔内の損傷を認めることが多い
・血液検査では、貧血と血小板減少に加えて、損傷した臓器に関連する項目の変動が検出される
・血ガスは、呼吸トラブルを把握し、必要な蘇生処置の決定に寄与する
・凝固検査は、現在陥っている凝固障害を把握し、輸血療法の必要性を明確にする
・ショックの有無に応じた救急対応を要する(ABC、輸液・輸血、胸腔穿刺など)
・腹部の損傷は、重度の出血、敗血症、尿路の損傷がなければ内科的に管理されている
・骨折は状態が安定した後に対応されている
・猫の生存率は90%以上である
・犬は論文によりバラつきがあるが、最大級の論文では90%以上の生存率である
・生存に関連したファクターは特定できなかった

 

上記のことから、適切な検査・診断・治療がなされれば、犬猫の高所落下症候群の生存率は高いことが窺える。しかし、10%未満とはなるが、亡くなってしまう例が存在していることも分かる。よって、今後、生死を分けるファクターを特定する研究が進んで高所落下症候群の生存率が向上するとともに、同症候群を防止する飼育環境を突き詰める研究が計画され、落下する犬猫自体が減っていくことに期待している。

犬よりも軽症で済むとは言え、猫も高所落下症候群を発症するので、愛猫の行動管理は徹底しましょう。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35650712/


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